変身願望

見た目、すなわち自分の外見を気にするようになった。客観的な自分への視線を考慮するようになった。そう考えて、ベランダを花で飾るドイツの町を思い出した。その時の観察者である僕は、内と外の間に立っている。そのベランダに飾られた花そのものが立ち位置としては近い。部屋の内部でも外部でもない想像外の大きさの中にその花はぽつねんと咲いている。

変身願望という言葉があるが、僕にとって変身の近道は、自分を見てみることから始まるようだ。そうすると、変身という言葉が当てはまらないような気がしてくる。むしろ余計なものに包まれたものから余計だと思われるものを自分で選択、排除し、「何が自分か？」という核心に迫る行為と言う方が当てはまると言うと大げさか。

普段、都市に生活し、ある人を認識する時も肉体は大部分を隠している。衣服を剥ぎ取っても真に美しい裸を手に入れたいと思う。そのためには真の自分でいることではないだろうかと思い始めている。しかし、シンプルなことが時には難しい。今の自分には余計なものがたくさんあるように感じる。ただでさえ曖昧な「自分」というものを知らず知らずによりいっそう見えなくさせる。

物事を始めると、常に自分が予定していた以上に時間がかかるという経験が、僕には多い。物事を始め、行動したという事実の物理的なエネルギーは、誕生の機が熟れるまでに、どの程度の時間を必要とするのだろうか。その計算を回答に導く方程式があれば教えて欲しい。あるものが誕生するまでには幾分かの時間が必要なようだ。その時間の中で容を作る事、その変容を変身と呼ぶ事ができる。それは水を注ぎ、土を溶かす作業をすることで、ベランダに花が咲く事に似ている。水を注ぐという事は花が咲くという事のどこかでイコールの記号が結びつけている。

何かを成し遂げようとした時に、僕に必ず自然発生する焦りという感情は、栄養素となって、その誕生を少しでも助ける働きとなっているのだろうか。今は過去と未来の複数点を交差している。僕の今はどのように誕生するのだろうか。今の僕にその姿は見えない。贅肉を脱いでいくことで近づいてゆけるだろうか
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